フィルトウィズの新たなる脅威

    ソーサルギア
「ある魔道技師の管理カードに届いたメールより」


『我々フィルトウィズ解放軍は、フィルトウィズを人間の手に取り戻し、
 今は無きグランシュタットに代わる統一国家を樹立させるものである!!』


最近こういうメールがよくまわってくるようになった。
「フィルトウィズ解放軍」・・・名前はたいそうご立派なこと。
だが皮肉にも、ご立派な名目が必要な連中ほどやっていることは卑劣なものだ。

・・・そういえば地球でもそうだったわね。



「消えた黄金のドラコニアン」

フィルトウィズの治安を維持していた「黄金のドラコニアン」が消失したことにより、
「真実を知る者」を処罰できる者はいなくなった。
もちろん、町の治安維持部隊であるディフェンダー達によって制裁を受けることもあるが
「真実を知る者」の特性上厳重な処罰を与えることは難しい。
大半の「真実を知る者」はフィルトウィズを守っていこうと考えているが、
自分勝手な連中はどんな世の中になってもいなくならないようだ。

目に余る者は魔将ラダマンティスが直々に制裁を下す、とも言われているが
それが真実なのかただの噂に過ぎないのかは不明。
ただ、宇宙船間に広まる「フィルトウィズのログイン中に脳を焼き切られた」
赤ネームの連中がいるという話は、噂にしてはかなりのリアリティだった。



「フィルトウィズ解放軍」

フィルトウィズ解放軍は「真実を知る者」が中心となる統一国家を作ろうとする団体で、
当然ながらその中核は「真実を知る者」によって構成されている。
だが、末端の構成員には口車に乗せられた対話成長型NPCもいるようだ。

統一国家を作ろうとするだけであれば悪とは言えないが、
彼らの大半は自分達が権力者となってフィルトウィズの貴族となろうとする者達であり、
対話成長型NPCをただの電子データであると考え、
どのように扱っても構わないという考えの持ち主である。
大義名分としては「強固な統一国家を作り魔族に対抗する」ということなのだが
『自由王』リーベルタースによるグランシュタット騎士団領解体後から
シュセンの防衛線が機能するようになったため、現状の支持はそこまで広くない。

フィルトウィズ解放軍の旗印となっている人物は、まだうら若き少女であるという。
・・・もっとも、彼女も「真実を知る者」だとしたら性別や年齢など考慮するだけ無駄になるが。



「魔将信仰者」

魔将信仰者・・・相当に厄介な連中だ。
まず、対話成長型NPCで魔将を信仰するような連中は
とっくに「裏切り者」として魔族になっている。
つまり、魔将信仰者は・・・「真実を知る者」なのだ。
彼らは魔将によって支配されることにより理想の世界が生まれると信じている。
なぜそのような思考に至ったか私にはわからないが、
現実世界の惨状から少し気が触れてしまってもおかしくはないだろう。

彼らの厄介な点は、どうやらラダマンティスは彼らを「人間側の勢力」と見ている点にある。
つまり、魔将信仰者が「大侵攻」などで人間側に対して妨害工作を仕掛けた場合・・・
最悪の場合、戦力バランスが大きく崩れてシュセンの陥落があり得る。
そうなるとナレッジ、シーリンクも即座に陥落すると考えると、
最早人間側に残された土地はアズマ以外になくなってしまう。

「大侵攻」において人間側への妨害行為は処罰対象だったが、
黄金のドラコニアンがいなくなったことによりこういった連中も生まれている。
そして彼らの何より恐ろしい点は・・・

「魔将信仰者は、現実世界の我々を邪魔者とみなし、攻撃を行う可能性がある」



「電子の亡霊達」

これだけ文明が発達してもこの手の話はなくならないらしい。
なんでも、対話成長型NPCが強い意志を持つことで、
その思念が残存することにより、こちらで「亡霊」とか呼ばれていたもののように振る舞うらしい。
・・・私がプレイヤーだったころにこのような存在を見たことはない。
何者かによってプログラムが変更されたのか、世界が独自に変化していったのか、
何かしらの「バグ」による産物なのか・・・?

なんにせよ彼らの大半は話が通じず、暴れまわるだけの魔獣と大差ないものも多い。
そういった連中は想いを遂げさせてやるか、戦って物理的に抹消するしかない。
幸い物理・魔法を問わず攻撃は通用するようで、
能力的には我々エクスプローラーと大きくは違わない様子だ。


 


「並行世界?」

最近、少し奇妙な噂を聞いた。フィルトウィズにはいくつもの並行世界があり、
私達がログインしている世界はそのうちの1つに過ぎないという噂だ。
そして、ある世界ではすでに人間は魔族に完全に滅ぼされ、
ある世界では魔将にも対抗し得る力を持った対話成長型NPCが生まれたという。

この噂の真偽はさておき、確かに運営がまだ存在するのなら、
いくつもの異なったワールドを作ることは可能だろう。だが、何のために?
「Project FW」の元々の目的であった戦争の解決は地球が滅びたことで無意味になった。
だが、今だに「Project FW」が稼働しているとすれば・・・
まだあの世界には私達が思いもしないような「真の目的」が存在する?


そして、これもまた噂に過ぎないのだが・・・
フィルトウィズの前身となり、完全に打ち捨てられたはずの世界の
対話成長型NPCが独自に力を身に着けて進化した結果、

「電子の海を経由してフィルトウィズに辿り着き、侵略を行おうとしている」

という話を聞いたことがある。
彼らは魔将にとって代わりフィルトウィズを支配し、
さらにはフィルトウィズを経由して現実世界にまで干渉しようとしているとか。
さすがに、いくらなんでも現実味のない話だとは思うが・・・

「現実味」・・・か。
私達にとっての「現実」はこの何もない宇宙?

それとも・・・




written by marsh

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