バンザイアズマ

・ロータスの手記


文才というものと縁のない私が、こうして筆を取ってみたのには理由がある。
様々な地を二人で巡ってきた事を自分なりにまとめて見ようと思ったのだ。
まず最初に記すのはフィルトウィズ東端の島「アズマ」。
我々もよく知るニンジャやサスライの故郷である。
アズマでは喜びの表現に「バンザイ」なるものがあると聞き、
執筆を始める今の高揚感を表現して、この手記を「バンザイアズマ」と名付けることにした。
・・・後ろで口元を抑えてるメリクリウスは気にしないことにした。



「最も安全で最も危険な世界”海”」

大陸の港町シーリンクから船に揺られる事およそ2日、
技術の進歩で船にギア動力が積まれたお陰で、行き来が簡単になったのは良い・・・が、
海の上というのが恐ろしい場所である事に変わりはない。
魔物も魔族も、そして魔将さえも近づかない場所なのだ、恐ろしくもなるというものである。
たまに船に小型の魚のような魔獣が飛び込んでくる事があるが、
護衛のリザード達が手際よく片付けてくれるのでこれはたいした問題ではない。
しかし、通常の航路や漁場を外れて超大型の魔獣等に遭遇すると、
一口で飲み込まれるというからたまったものではない。

昔ワンダラーに話を聞いた所、海で超大型の魔獣に遭遇するのは
「不正防止のプログラム」だとかなんとか言っていたが、何がどう不正なのかいまいち分からない。



「アズマの港ヌオック」

アズマの陸地が見えてきた。この小さな港町はヌオックという。
陸の上ではなく入り江に竹で組まれた足場が広がっており、
建物も木と竹を組み合わせて足場の上に高台のように地面から離して作られている。
これも生活の知恵なのだろうか?足場同士での移動は小舟を使っているようで、
小舟の上で釣りをするものや昼寝をするものも居た。

町の住人の服装は今まで聞いてたアズマ風とは少々違うものが多く、
笠をかぶりシャツと膝丈ズボンを履いている男性もいれば、
体のラインが分かるような薄手の服を着ている女性もいる。
私のイメージする人々と少し様子が違うが、これはアズマ南部式らしい。
私達が知っているのはアズマ中部式と北部式が混ざったものだとか。

食べ物は香辛料を入れた甲殻類のスープや干物が多く、
熱帯域の果実やレモン等が見かけられる。
メリクリウスは気に入ったようだが私は出来れば米が食べたい、大陸で食べた「オチャヅケ」を思い出す。
数日この辺りを調べたら首都の方にいってみよう、それにしても暑い。



「アズマの首都ミヅホ」

商隊に混ざって馬車に揺られること半日、アズマの首都ミヅホが見えてきた。
石垣に白い壁、瓦と呼ばれるアズマ式の煉瓦を
屋根に使っている建物が見えてきた。あれがアズマ式の城塞らしい。
倉庫(なんと壁は土でできているらしい)や外の壁は同じようなデザインだが、
基本的に建物は木と紙がメインとなっており、大陸では見かけない建築方式だ。
大陸の町シュセンは燃えないように皆石材だし、ナレッジに通常の建築物はほとんどない。

このあたりは非常に活気があり、私達がイメージするようなアズマの衣装もよく見かける。
キモノだとかキナガシだとかスタイルによって名前が違うらしい、
シャツとチェニックの違いみたいなものだろうか?
北部式の衣装はワイズマンやドラコニアンが好んで着ているらしいのだが、
今回の旅ではワイズマンのものしか見れなかった、残念。

そういえば今は北部と中部は合併してしまったらしい。
小さい村は残っているらしいのだが足を運ぶには少々山道が過酷だ。
メリクリウスは行きたくないらしいし、私も行きたくない。

米が食べれると大喜びで食堂に入った私を待っていたのは麺だった、蕎麦だとかうどんだとか。
これはこれで美味い、帰りにもまた食べよう。宿を出る時には弁当にオニギリを作って貰う事にする。
そういえばこちらではあまり肉類を見かけない、だが魚介は美味い。
ふとあの脂ぎった魚が食べたくなりフィッシュアンドチップスを作ってもらう。
どういうものか分からないらしいので一つ一つ説明した、出てきた料理は大変美味しくて泣いた。
どうやらこれはテンプラというらしい。本当にうまい。



「カミサマ?」

「神様」と書くらしい。・・・神様とはなんだろうか?
巫女さんと呼ばれる人に聞いてみたのだが(狐の耳をつけたナインテイルという種族だった)
自然現象や自然そのもののように「人間の力の及ばない事に名前をつけたもの」
といった認識で良いらしい。実際にその神様がいるわけではなく、
自然の力に名前を付けて疑似的な人格を与えている、といったところか。

せっかくなのでお賽銭(運営費だろうか?)とやらを入れて祈っておく事にする。
「どうか帰りの船が大雨で揺れませんように」
・・・見よう見まねだが、こんなものでいいだろうか?
ついでに名物の健康御守りも買った、開けてはいけないのだとか。



「ヒトとアヤカシ」

アズマでは人間以外は全て「アヤカシ」と呼ぶらしい。
差別的な表現なのかと思ったが前述した神様と関係する信仰に近いのだとか。
人間と違って自然の力である魔法を使えたり、
特異な力を持ち「妖しい魅力を持つ人達」という意味を持つらしい。
今ではこちらの大陸と同じ呼び名を使っているが、古い言葉として書物にはそちらで残っているらしい。
知恵も持たずに人を襲うのは「ヨウカイ」と言って区別しているとか。

・メモ
ドラゴニアン:リュウジン
リザード:ヤトガミ
ワイズマン:カッパ
フラウ:モリガミ
シルヴァテイル:カシャ
グラント:ダイダラ
ストームコーザー:テング
ナインテイル:イナリ



「サスライ」

サスライについて聞いたみたところ、そんな職業はないと言われて驚いた。
なんでも「サスライ」は「流離い」と書き流れ者の事をさす言葉らしい。
そしてカタナ使いは本来「サムライ」と呼ぶのが正しいのだとか。
長い一本のカタナを使うものと両手に一本ずつカタナを持ち二刀流で戦うもの、
それぞれコジロースタイルとかミヤモトスタイルだとかいうらしい。
古のサムライ達から受け継がれてきたものなのだろうか。

カタナを抜いた剣速だけで遠くの物を切ったり、
目の前の鉄塊を真っ二つにする非常識な技を見せつけられた。
人間は魔法が使えないというが、アズマの人間は実は使えるのではないだろうか。



「ニンジャ」

ニンジャ。全身黒装束を着ている者や、一見普通の村人にしか見えないような者までいるが、
シノビの技を学んだものは十把一絡げにして「ニンジャ」と呼ぶらしい。
かつてはスパイのような仕事やアサシンのような仕事をしていたらしいのだが、
現在では薬草の知識などを生かして医者になっている者等が多いらしい。喜ばしいことである。

彼等の使うニンジャソードはカタナに似ているが、
こちらの剣のように真っ直ぐな物が多く、取り回しが効くように短くしているらしい。
クナイダートと呼ばれるスローイングダガーは元々は大工の道具なのだとか。

・・・人間は魔法を使えないのは確かなのだが、
空間に溶けるように隠れたり体内で生成したとかいう毒針を吹き出したり、
「ハットリ」や「サスケ」と呼ばれる階級になると
アポートで巨大な蛙を呼び出して毒霧を吐き出させていた。
・・・本当に人間は魔法を使えないのだろうか。



「センジュツ」

自然の力を借りたり物事を禁じたり特殊な陣を敷く術師の事らしい。
大陸のソーサルギアに近いものなのだろうか?

金属の力を借りれて雷の直撃を受け流す、刃を封じてなまくらに変える、
水の力を借りて種を大木へと成長させる、
大地に術をかけて行動を阻害する、などなど多種多様な力を持っている。
もちろん達人でもなければさほど強力な能力は持たないが、
エクスプローラーになる者のレベルでも(達人は山奥に篭ってしまうのだとか)
五行器と呼ばれる道具の力を借りてちょっとした術を防いだり、
七星剣と呼ばれる星の描かれた木剣を使って陣を敷いたりする事はできるらしい。

・・・やっぱりアズマの人間は魔法使えるんじゃないかな。



-以下追記-

「アズマ北部ホウライ」

山々が連なるアズマ北部全域を指す。「ホウライ」という言葉は
何やら神秘的な意味を持つらしいが詳しくはわからない。
ここに暮らす種族はストームコーザーとワイズマンが最も多いが、
タオシー達も修業の場として使っているという。
帰りたいといったはずなのに、なぜここまで来てしまったのだろうか。

・・・とはいえ来てしまったものは仕方がない。
ホウライの山の大風穴からアカシャにも向かってみることにしよう。



「地下世界アカシャ」

アズマ北部ホウライの山にある大風穴から降りていける地下の世界。
思ったよりジメジメシておらず、涼しい。むしろ肌寒いくらいだ。
片道だけなら地の底に伸びる大穴(正確にはこの穴が「アカシャ」らしい)から
飛び降りる事でもアカシャにたどり着くことは可能で、時間的には一番手っ取り早い。
(勿論パラシュートや落下速度を調整する魔法は必須だ、地面で潰れたくはない)

コケ植物や維管束植物が多くキノコ等が大量にあるが、
キノコに化けて獲物をおびき寄せる魔物等も発見されている。
太陽の光が入る場所はほとんどなく、あったとしてもかなり限定的な範囲のようだ。

地下水脈もあるのか地下だというのに川も流れている、場所によっては飲めるらしい。
逆に言うと、多くの「川」は金属等が染みていて体に悪いらしい。住民によると街の川は安全だそうだ。
この街は地下の大きな空洞に作られているようで、大体が石造りの建物ばかりだ。
火は上に穴が開いてる場所に雨避けの小屋を立てて、
そこで使っているらしい。煙が外へと流れていくのが見える。

動物達も独自の進化をしたものが多いようで、アルビノ種に近いものが多く見受けられる。
亜人達はいつもの生活とほとんど変わりがないようだが、
シルヴァテイルは確認できていない。彼等にはこの世界は合わないのだろう。
それにしてもこんな風通しの悪い場所に、有翼種ストームコーザーが居る事には驚いた。
彼等は独自の進化をしており、翼は蝙蝠の様になっており夜目も利くらしい。
逆に明るい場所ではほとんど見えないようなので、
外のストームコーザーとは昼夜が逆と考えていいだろう。



「虚空の町ガンダルヴァ」

アカシャの中で最も有名な町が、虚空の町ガンダルヴァだ。
ケイヴウォーカーと呼ばれる採掘者が作り出した
アカシックホイールという車両用の線路を延々と辿っていくと、
突然開いた空間に出て、その中央に存在する煌びやかな宮殿が我々の目を奪った。

ガンダルヴァは大きく分けて富裕層が住む「島」と、一般層が住む「外壁」に分けられる。
「島」は地底湖の中央に存在しており、色とりどりのステンドグラスで飾られた宮殿や、
多くのアカシックホイールが出入りする大型の「ステーション」が存在する。
大型アカシックホイールで地上と交易を行う富裕層がこの町を実質的に統治しており、
彼らの様々な願い事を聞き届ければ(ワンダラー達が「クエスト」と呼んでいたものだ)
アズマの首都ミヅホへ直通のアカシックホイールが使用可能になり、
さらなる地下に存在する「星間ギア船」に搭乗して「天体観測所」に向かうことができるらしい。

・・・もっとも、「天体観測所」も今となっては完全に魔将ザバーニーヤの支配地域だ。
命が惜しければ近寄らないほうがいいに決まっている。

「外壁」には無数の洞窟が点在しており、それを住処としている人々が存在する。
かなり道は狭く急傾斜も多いので危ないと思うのだが、
ケイヴウォーカー達は器用にアカシックホイールを運転して行き来している。
この付近では有望な鉱脈が多くあるらしく、彼らケイヴウォーカーの発掘する資源は
フィルトウィズにとって欠かせないものとなっている。
そして、このゴールドラッシュを当て込んでケイヴウォーカー以外の人々や異種族も
かなりの数が集まっている。また、アカシャアーツと呼ばれる格闘技の使い手のメッカにもなっている。
もっとも、シルヴァテイルだけはこの閉塞的な空間を嫌うようだ。

・・・このコウモリのようなストームコーザー、どう見ても魔族なんだけど人間側の種族なんだなあ。




「アカシャアーツ」

アカシャで生まれたとされる徒手での格闘術で、
狭い場所で戦う為に、動き回る事よりも少ない動作で威力を上げる武術らしい。
練気と呼ばれる技術で気(生命エネルギー?オーラ?彼等の説明は不明瞭だ)を練りあげる。
打撃を当てたり攻撃を捌く事でも集中力が高まり、その気を高める事もできるらしい。

硬い物を打ち砕く技(グラントが一撃で膝をつくような打撃は異常だ)
光球のような物を掌の中に作り出しそれを発射する技(龍咆という名前の技らしい)
己の体を鋼のように硬くする技(私が見た人物はアームガンですら傷1つつかなかった)
少し拳を当てただけで凄まじい威力の打撃を放つ技(寸勁とか崩撃とか呼ぶらしい)
などなど、見せてもらった技の数々は私の理解を超える技ばかりだった。
彼らの多くは防具と呼べるようなものはつけていないが、
全身を護るような装備は自然を感じるにあたって邪魔になるらしい。


written by hagane & marsh

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